最近では不動産業者がみずから「売主」となる物件が増えてきている。不動産業者が売主の場合は銀行からの融資が組みやすくなることが多いので、はじめて不動産物件を購入する初心者にとっては取組みしやすくなっている。
不動産業者が売主になるメリットとして、仲介手数料がかからないという点を強調してくる場合があるが、これは本当なのだろうか?ここでは不動産業者売主物件の利益の仕組みについてみていきたいと思う。
目次
不動産取引における「仲介」と「売主」の違いとは?瑕疵担保責任は?
物件の売買における不動産会社の役割は、「仲介」と「売主」に分けることができる。
「仲介」の場合には、売主と買主の間での不動産取引の仲介を行い、仲介手数料として物件価格の3%+6万円(税抜き)が発生する。売主が宅建業者ではなく個人の場合には、瑕疵担保免責となっている場合が多く、基本的には物件の修繕などは行われずに現況のまま受渡することが多い。
一方で「売主」の場合には、直接投資家に販売するため、不動産物件の情報開示などを含めてスムーズに取引を進めることができる。「仲介」と異なり、仲介手数料は発生せず、宅建業者が売主であるため、2年間の瑕疵担保責任が付くことになる。 入居者募集の為に必要であれば、大規模修繕やリフォームを行うこともあり、不動産投資初心者には取り組みやすい手法となっている。
「仲介」は不動産投資経験者向け、「売買K」は不動産投資初心者向け。
「仲介」は不動産投資経験者向けと取引ではあるが、お宝物件を見つけることができるのは「仲介」である。ただし不動産物件を見極める力が必要となる。
「売主」は初心者が取り組みやすいが、不動産価格がやや高額になることが多い。ただ物件購入後から安定して賃貸経営ができる場合が多く、空室が多い場合には「売主」が家賃保証をしてくれる場合もあり、物件取得時から満室かそれに近い家賃収入を得ることが可能となる。
2年間の瑕疵担保責任がついていることも、初心者にとっては安心の材料となることだろう。不動産投資をはじめた初期の段階では、建物の問題については気付かないことが多い。
「売主」物件は仲介手数料が発生せず、本当にお得なのか?不動産業者の利益の仕組みとは?
不動産業者が「売主」となる場合には、仲介手数料がかからずお得と感じるかもしれないがこれは本当だろうか?たとえば1億円の不動産を購入した場合の仲介手数料は、300万円以上と高額であるため、節約できればかなり大きい。
しかしながら、これにはからくりがある。不動産業者が「売主」になるメリットというのは、仲介手数料以上に利益を得ることができるからである。本来「仲介」であれば、瑕疵担保の責任を負う必要が無く、仲介手数料を得られるのに、「売主」になって瑕疵担保責任を負い、その後の運営の面倒も見るとなると、それにみあった手数料が必要となる。
したがって、不動産業者が「売主」の場合には、表向きには仲介手数料が発生しておらず、お得なように見えるが、それ以上の利益が物件価格に含まれていることになる。たとえば、「仲介」であれば1億円の物件が、「売主」であれば1億1,000万円以上(10%以上の利益)となっていることが多い。
不動産業者売主物件で仲介手数料がかからないのは本当にお得なのかまとめ
このように不動産業者が「売主」となった場合には、物件価格に仲介手数料以上の利益が含まれているので、不動産業者に仲介手数料がかからずお得といわれても、飛びつかずに冷静に判断する必要がある。
「売主」であれば瑕疵担保責任もつくが、そのリスクに見合った利益は物件価格に含まれている。初心者にとっては「売主」物件の方が取り組みやすいが、不動産業者の営業トークにのせられないように、注意が必要だ。
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