国土交通省は個別の不動産に対してIDを発行し、「履歴書」のように過去の成約価格やリフォームの実績を参照できるようなシステムを構築する方針を発表した。
このシステムによって不動産取引の透明性を高め、中古物件の売買を活発化させる狙いがある。
ここでは不動産ID発行による、不動産取引への影響をみていきたいと思う。
レインズ上で取引価格やリフォーム(修繕)履歴・実績を確認可能に。
宅建業者だけが閲覧することができる不動産情報サイト「レインズ」に物件を登録した際に、個別のIDを発行する形となり、同一の物件と判定された場合には過去の取引価格やリフォーム・修繕実績を参照することが可能となる。
国土交通省は2019年度中に検討委員会を立ち上げて、同年度中の導入を目指す方針。
これまでは過去の成約価格やリフォーム実績を確認するためには、登記簿から過去の所有者を特定して、個別にヒヤリングを行うしかなかった。
これらの情報は公開情報ではないため、問い合わせを受けたとしても公開する義務はなく、情報を取得できるかわからない上に、取得できるとしても相当の労力が必要になるため、調査を行うのは現実的ではなった。
三為業者によるスルガ銀行スキームは使えなくなる?
取引価格やリフォーム履歴を確認することができるようになれば、不動産取引にどのような影響を与えるのだろうか?
このシステムが完全に導入されれば、不当な高値で不動産物件を購入されられるサラリーマン投資家の数は大幅に少なくなると考える。
最近話題となっているスルガ銀行のシェアハウス「かぼちゃの馬車」向け不正融資問題や、TATERUの不正融資問題で共通しているのは、サラリーマン投資家は相場価格より大幅に高いか価格で不動産を購入させられた。
その高値の物件に対して融資を付けるために、顧客の預金残高などを改ざんしていたのである。
「かぼちゃの馬車」もTATERUの問題も基本的には新築アパートであるため、今回のシステムによる影響は受けないが、高値で中古の不動産物件を売りつける業者のことを三為業者(第三者のために行う取引であるため、このように呼ばれる)と言われており、20%~30%以上の利益を抜いていたと言われている。
もし取引価格の履歴が参照できるようになれば、三為業者の仕入れ価格が参照できることとなり、今までのようにスルガ銀行を活用したスキームは使えなくなるだろう。
不動産業者とサラリーマン投資家の情報格差が無くなる。
中古の不動産物件をオーナーチェンジ(入居者が付いたまま購入すること)で購入する場合には、室内を確認することができないため、悪質な不動産業者は修繕履歴を偽造することが可能であった。
このシステムが導入されれば、修繕履歴も参照できるようになるため、基本的には偽造することができなくなるだろう。
物件価格も含めた不動産情報の透明性が増し、不動産業者とサラリーマン投資家の情報格差が無くなり、不動産業者が不当な高値で販売するというケースが無くなることが期待される。
ただ一方で不動産業者からしてみれば、相場より安く購入した物件を市場価格で販売しているだけという状況でもあるため、仕入れ価格が公開情報となることに対しては抵抗があるかもしれない。
まとめ
国土交通省は2019年度中に不動産へのIDを発行することを検討している。
このシステムが導入されれば、悪質な取引が横行したここ数年の不動産取引を是正するきっかけとなるだろう。
しかしながら「かぼちゃの馬車」やTATERUなど新築物件を扱う場合には、これらのシステムは適用できない可能性が高く、今後は新築物件を中心に悪徳業者が増える可能性はあるかもしれない。
いずれにせよ不動産投資を行うのであれば、だまされないようにしっかりとした知識を付けることが重要となる。
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